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見ず知らず 一話

 タイトルは仮です。もしかしたら変更するかもしれません。





 鞄から鍵を取り出し、鍵穴に差し込む。ボロアパートの古いドアが、ガチャガチャと音を立てる。

 ノブをひねりながらドアを開け、玄関で靴を脱ぐと、まずは鞄をその辺りへほったらかして、着替えを探した。

(暗いな……)

 部屋が、暗い。天気が悪いせいもあるだろう、日も落ちかかっていた。

 藤井愛美は電気のスイッチを押した。蛍光灯が二本光る。リビングとして使っている広い部屋は明るくなったが、妙に不気味な雰囲気がある。特にいわくつきの部屋というわけではないのだが。

 リビングの他に、五畳程度の部屋が二部屋ある。一部屋は愛美の部屋で、もう一方は物置に使っている。愛美はなんとなく、この二つの部屋の電気もつけた。母親がいれば怒られるだろう。

 母親は仕事で忙しく、ほとんど家にいない。父親は愛美が物心つく頃にはいなかった。

 愛美は普段部屋に一人でいることが多い。特に趣味があるわけでもないが、高校に入学した時に買ったノートパソコンが気に入っており、よく使っている。あまりいいものではないが、ないよりはずっと良かった。

 まず風呂を済ませ、軽く夕食を取ると自分の部屋にこもった。相変わらず他の部屋の電気もつけている。

 愛美は二年生になったあたりから、SNSに手を出し、のめり込んでいた。ネット上で、実際には会ったことのない人間と知り合い、コミュニケーションをとる。

 愛美は友達がいないわけではなかったが、なんとなく部屋にこもりがちだった。

 SNSでは同性の友達が多かったが、最近になって異性の友達ができた。祐介という男で、どうやら歳も同じで、住んでいるところもまずまず近い。電車を使えば会えないこともないだろう。会ったことはないが。

 愛美はこの男の顔を見たことがない。相手の祐介も愛美のことは簡単なプロフィールしか知らない。それでも愛美は、家に帰ってくるとパソコンを起動し、この男とやり取りをするのが楽しみだった。

 気がつけば二時間もやり取りをしていることがよくあった。妙な話だが、愛美の感情は恋に近かった。この男のことが好きになっていたのだ。



 ただ相手の男、祐介はどうだろう。

 このSNSには、お互いにしか見えないメール機能と、見ようと思えば他人のやり取りを誰でも見られるタイムラインという機能の二つがあった。ただ、メール機能はあまり使われることはない。タイムラインのほうが手軽で人気だった。

 愛美は祐介が他の人間とタイムラインでやり取りをしているのをよく見ていた。監視していると言ってもいいほど、よく見た。数時間分遡って見ることもあった。

 祐介のやり取りの大半は、実際の学校の友達らしく、それもほとんどが男だった。

 しかし一ヶ月ほど前、愛美が祐介のタイムラインを監視していた時、知らない女とやり取りをしているのを発見した。

 その女は香織という名前で、どうやらこのSNS上で知り合ったらしい。愛美の見たところでは、ちょっとやり過ぎな感もあるほど親しげだった。

 こまめに挨拶を交わし、日常の細々としたことも報告しあっていた。この二人の仲は日を追うごとに良くなっていき、偶然かどうか、それと比例して祐介の愛美に対する返事がなんとなく冷たくなっていったような気がした。

(この香織とかいう奴のせいで祐介君がそっけなくなってるのかな……)

 愛美はそう思い込んだ。事実、そうだったかもしれない。愛美はSNS上の自分のプロフィール画像を、自分の好きな熊のキャラクターにしていたが、この香織は本人の顔写真らしいものを載せている。口元は隠れており、画像そのものも加工しているのだろうが、これが中々に可愛い。この香織は祐介以外にも数名の男とやり取りをしているが、やはり顔写真を載せているぶん、チヤホヤされている。

 とにかく愛美は、このままでは祐介を取られてしまうという危機感を日々つのらせている。

(私も顔写真……)

 香織に対抗するには同じ土俵に上がるしかないと思った。



 そう決めた次の日から愛美は、パソコンに詳しい友人に画像を加工するための方法を聞いてまわった。

 愛美は決して自分の顔に自身がある訳ではなかった。特にパーツに欠点がある訳ではなかったが、なんとなく印象の薄い顔をしている。肌が人よりも白いのが微かな自慢だった。

(向こうだって加工してるんだし、私だって)

 愛美は家に帰り、一通りのことを終えると自分の部屋に入った。普段なら真っ先にパソコンを起動させ、祐介に話しかけるところだが、この日は携帯を片手に自分の顔を撮影し始めた。

 パシャ。パシャ。

 慣れないことで、中々納得がいくものが撮れない。30回はシャッター音を鳴らし、ようやく一枚に決めた。ピースサインで口元が見えそうで見えない、絶妙な写真だった。人間、口元が見えないだけで大きく印象が変わる。

 その写真をパソコンに送り、画像編集ソフトのダウンロードを開始した。その完了を待つ間、いつものように祐介のタイムラインを監視することにした。



 顔写真の加工は思うように捗らず、少しずつ修正、やり直しを繰り返し、数日かけて完成させた。

 出来上がったものは元の写真とは随分印象が違う。光をとばして、全体的にうっすら白く、はっきりしていない見え方の写真になった。黒目は大きく、輝きが違う。ニキビ跡も分かりづらく、髪も綺麗に見える。

(まあまあかな、どうだろ……)

 本人としてはまだ不安があるようだが、とにかく愛美はその写真を、SNSのプロフィール画像に設定した。

 それからというもの、祐介の反応は目に見えて改善された。

「これ愛美?可愛いね」

 初めて例の顔写真を見た時の祐介の反応だ。愛美としては大きく手応えがあった。少しそっけなく感じた祐介の態度も、これ以後改善されたように思えた。

 祐介はまだ香織と仲が良さげにやり取りをしていたが、愛美はとりあえず良い結果が出たことに満足していた。

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更新ありがとうございます!続きも楽しみにしてます!

Re: タイトルなし

> 更新ありがとうございます!続きも楽しみにしてます!

コメントありがとうございます。
次は遅くなりそうですが、今月末から来月の頭あたりには更新できると思いますのでよろしくお願いします。
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Author:デジタル
キャットファイトの小説を書いていこうかと思います。

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