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女の戦い 出会い 1

 入学式当日の朝、竹原由衣は準備を済ませると、最寄りのバス停でバスを待った。親は仕事でくることができない。由衣は1人でバスに乗った。

 20分ほど揺られ、東高校前という学校最寄りのバス停についた。目の前にある坂を登っていくと、これから3年間世話になる東高校が見えてくる。ここにくるのは入学試験の時以来だ。

(うまくやれるといいなぁ)

 学生としても、女としても……、由衣は希望と不安を胸いっぱいに抱えて、坂を登った。

 それより少し遅れて、東高校前でバスを降りたのは、沢野美優だ。美優も、1人できている。

 決して時間に余裕があるわけではないが、美優は焦らない。特に急ぐ様子もなく、坂を登った。

 10分程かけて校門の前にたどり着く。門をくぐると受付があり、そこにいた教師に体育館へいくよう促された。

 門からはいって左に5階建ての校舎が3棟、漢字の三のように並んでいる。そしてその奥に体育館がある。美優は学校の敷地を見回しながら歩いていく。

(ここで3年間過ごすわけか)

 その胸には、ただ希望だけがある。不安は微塵もない。

 体育館の前では、同級生達がクラスごとに整列していた。クラスは4組まであり、男ばかりだが、1クラスに1人ずつくらい女子生徒の姿が見える。

 それを眺めていた美優に、1人の教師が声をかけてきた。

「自分の名前を探して、列に入ってください」

 美優は、教師が差し出した名簿を見た。

『1年1組、出席番号13番、沢野美優』

 名前はすぐに見つかった。だがそのすぐ下に、気になる名前があった。

『1年1組、出席番号18番、竹原由衣』

 同じクラスに女の名前があった。その名簿を見てみれば、2組から4組には、女の名前らしいものは1人ずつしかない。1組だけ、2人いた。

 女1人のクラスが良かったと、少し気落ちした美優だったが、

(こんな学校にくるんだから、ブスに決まってる)

 そうすぐに気持ちを切り替えると、自分の列に向かった。

 その途中、2つに別れて並んでいた左側の列の中程に、子柄な女の後ろ姿を見た。

(あれが竹原由衣か。顔が見たいけど、無理かな)

 回り込まないと見えそうにない。美優は諦めて列に入った。

 そんな美優の通り過ぎていった背中を、由衣は目で追っていた。

 由衣はこの時初めて同じクラスに女がいることに気づいた。名簿にある美優の名前を発見できないほど、緊張していたのだろう。

(女の子いるんだ、仲良くできるかな)

 由衣は美優の存在を、好意と期待を持って見た。



 入学式は何事もなく終わった。生徒にとってはただ話を聞くだけの退屈な時間だったに違いない。由衣にとってもそうだった。

(やっと終わった)

 そう一息つくと、今度は列のまま教室に誘導された。1年生の教室は、校門から見て1番手前の校舎の、5階にある。3棟ある校舎はどれも5階までなので最上階だ。

 教室に入ると、出席番号順に座った。席は6列並んでおり、由衣の席は黒板に向かって左から3番目の列、その1番後ろだった。ちなみに教室の右に出入り口があり、その向かいは窓で、グラウンドが見下ろせる。由衣の席は真ん中2列の窓寄りということだ。

 その由衣の席がある列の先頭には、美優が座っていた。

(あの子が、えっと、沢野美優さんか)

 由衣は配られた名簿に目を通した。まだ美優の後ろ姿しか見ていない。どんな子なんだろう、由衣は気になって仕方がなかった。

 少しすると担任の教師が入ってきた。中年の女性だ。スラッとした体型で、くっきりとした目鼻立ち、若い時はとびきりの美女だったに違いない。

 その教師が、今後の行事、日程についてたんたんと説明を始めた。温度の低い声に、教室は静まりかえり、クラス中が耳を傾ける。

 教師の話が終わった後、1人ずつ自己紹介をすることになった。

(自己紹介かー、どうしようかな)

 進級や進学はもちろん、ソフトボールのリトルチームや部活動など、環境の変化を多く経験していた由衣はこういうことに慣れていた。だがここは男ばかりで女である自分へのハードルは低いだろう、悪目立ちせず無難にいこう、そう思った。

 出席番号順に1人ずつ順番に、黒板の前にでておこなう。当たり前だが、次から次に男が続く。由衣はそれを見ながら、ある種、男の品定めをしていた。

 が、ついに美優の順番がきた。

「じゃあ次は、沢野美優さん」

 担任がそう声をかけると、美優と呼ばれた女が席を立った。黒板の前にでる。

(どんな人だろうなぁ)

 由衣は楽しみに見ていた。美優が前に立ち、くるりとクラスメイトの方へ向いた。

(私よりちょっと背が高いかな、スポーツはやってなさそう。顔は……、まあまあかな)

 由衣は美優をそう評価した。すぐに美優の自己紹介が始まる。

「沢野美優です。趣味はお菓子づくりと音楽鑑賞、特技は料理かな。あとー、あ、彼氏いません。そっちのほうもよろしくお願いします」

 美優はいかにもつくったような高い声で自己紹介をすませ、笑顔で手を振った。クラス中が湧き、一際大きい拍手が起こった。

 だが由衣はそれを静かに見ていた。

(ぶりっ子かー、ああいうの苦手なんだよなー)

 由衣の中にあった好意と期待が崩れた。仲良くなれそうにない。もともと女同士の付き合いが得意でない由衣にとって、ああいう女らし過ぎる女は1番苦手だった。

 だがそんな由衣の気持ちとは裏腹に、美優は自分の自己紹介に会心の手応えを感じていた。ゆうゆうと自分の席に戻る。その時、列の向こうに由衣の姿も見えた。

(あれか……)

 その前の生徒の体が大きく、よく見えない。美優は大人しく、由衣の自己紹介を待った。

「じゃあ次、竹原由衣さん」

 いよいよ由衣の順番がきた。美優が座っている横を、由衣が通り過ぎていく。

 由衣が前に立った。1番前に座っている美優の目の前、教卓を挟んですぐそこだ。

(ふーん、まあまあ可愛いかも。でもなんとなく芋っぽいし、引き立て役にするくらいのつもりで仲良くしてやってもいいかな)

 私のライバルにはならない、美優はそう思った。

 由衣が口を開いた。

「竹原由衣です。趣味というか、小学校のころから6年間ソフトボールをやってました。これから3年間、よろしくお願いします」

 由衣の自己紹介はさらっと終わった。そして拍手が起こる。美優も周りに合わせて拍手をしたが、

(サバサバ風っていうか、自称サバサバ系って感じか。こういうのが1番たち悪いんだよなぁ、男に興味ないでーすみたいな顔しちゃってさ)

 美優は本能で、由衣が今後の障害になることを感じた。

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楽しみにお待ちしておりました!
これからどうなっていくのか楽しみです!

更新めっちゃ楽しみにしてました!!
これから楽しみすぎます!!!!!!
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Author:デジタル
キャットファイトの小説を書いていこうかと思います。

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