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見栄 1

 学校につき荷物を整理すると、本を読んだり課題をしたりして時間を潰す。1時間目から4時間目までを誰とも会話せずにこなし、昼になると外のベンチで1人弁当を食べ、午後からの授業も黙々と受ける。学校をでてから家につくまでも、一切言葉を発しない。

 倉本美絵はそういう女だった。

 高校生になって2か月が過ぎた。周りでできあがっていくグループにははいっていけず、また、はいろうと努力もしなかった。彼女は心のどこかで、わいわい楽しそうにやっているそういうグループの人間を羨んでいたが、また別のどこかでは見下してもいた。

 1人で上手くやっていく自信はあった。だが、人間は他者と関わらなければ生きていけないものらしい。あまりに会話のない寂しい日常の、その隙間を埋めてくれるのは、今年中学生になったばかりの亜美という妹だった。

 亜美は素直な少女で、どんな話しも熱心に聞いてくれたし、毎日必ず、この姉とのコミュニケーションの時間をとってくれていた。

 美絵としてはこの妹との会話だけが、心の癒しだった。とにかく妹が可愛く、彼女だけが、自分に好意の目を向けてくれている。ただ1つの心配事は、この妹には自分が友達のいない寂しい学校生活を送っているということを、知らせていないことだった。

 妹である亜美は、美絵とは違い活発で、少しやんちゃな少女だった。ついこの間まで小学生だったというのにもう化粧を覚え、彼氏のような男もおり、学校をサボることもしばしばあった。

 それと対極にあるような自分の現状を知ったら、はたしてどう思うだろうか、軽蔑するに違いない。美絵はそれが不安だった。格好いい姉でいたい、そんな気持ちが、つい先月、美絵に1つの嘘をつかせた 。

 その嘘は武勇伝のようなもので、月並な内容だった。隣のクラスのなんとかという女と決闘をして勝ったとか、そんなことを口走ったのを覚えている。

 流石に無理があったか、とも思ったが、そんな心配とは裏腹に、妹はその武勇伝を目を輝かせて聞いていた。亜美は不良への憧れのようなものを持っているようだった。

 妹の目からは、確かな尊敬の念を感じた。今まではただ仲の良い姉妹でしかなかったが、初めて姉として尊敬された気がした。ただただ嬉しかった。

 つい舞い上がり、毎日の妹との会話に、似たような嘘を何度も織り交ぜるようになった。どこで喧嘩をしたとか、派閥争いをしているだとか、嘘はどんどん大きくなった。

 そんなことを続けていたある時、妹の友達が数人、家に遊びにきた。どうやらそんな格好いい姉に会ってみたいということのようだ。

 美絵は不良らしい服装をしようとしたが思いつかず、少しでもそれらしく見せようと高校の制服を着て、下着が見えそうなほどスカートを短くし、せいいっぱいの化粧をして会った。

 美絵は女としては背が高いほうだ。それにコンプレックスであった目つきの悪さも役にたった。まだ成長途中の中学生にはそれなりに威圧感があったようで、なんとかその場は乗り切れた。だが、これがかえってよくなかったようだ。

 それから数日後、妹が神妙な面持ちで、美絵の部屋に訪ねてきた。頼みがあるという。

 話しは先日のこと、妹の所属しているグループが、隣のクラスのあるグループと揉め事を起こしたという。理由は、グループのリーダー格の女が目をつけていた男を、相手のグループの、やはりリーダーの女がとったということだった。

 最初はただの口論だったが、事はそれだけで終わらず、双方嫌がらせの応酬が続いた。ついに話し合いの場が設けられたが決着は着かず、ついに代表者をたてて1対1での決闘がおこなわれることになった。

 その決闘の当日、指定された場所で亜美達が待っていると、相手のグループが少し遅れて現れた。そしてその中に、高校の制服を着た、ひときわ背の高い女が混ざっていた。その女の目つきは鋭く、体は、あどけなさの残る亜美達よりひと回りは大きかった。

 相手のグループのリーダーが、代表はこの人だと、その女を指差した。亜美達のグループからはリーダーがでることになっていたが、あまりに体格差があるため、やるのを渋った。高校生を連れてくるのは卑怯だとか罵ったが、相手グループはあくまでも代表はこの人だといって譲らなかったため、その日は逃げるように退いた。その背中に相手方からの容赦のない罵声が浴びせられるのを、亜美は歯を食いしばってこらえた。

 美絵にとって問題はここからだった。頼みというのは、こちらのグループの代表としてきてもらいたいということだった。先日、家に遊びにきた少女はグループのリーダーで、この姉の品定めにきていたらしい。

 美絵はなんとか断ろうとしたが、すがるように頼んでくる妹に押し切られ、まずは相手と話し合いをするという約束で、その頼みを了承した。

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キャットファイトの小説を書いていこうかと思います。

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