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見栄 3

 どうせやるなら先手をとったほうがいい。まだ喧嘩を渋っているであろう実由紀の隙をつき、素早く抱くように手を背中に回すと、後ろ髪を捕まえた。勢いよく下へ引いてやると、実由紀の顔ががくんと上を向く。首が抜けたかというほどの勢いだったため、ほんの少し罪悪感が湧いたが、同時に手応えも感じた。勝てるのではないか、そう思った。

 だがそれも一瞬だった。実由紀の手が同じようにこちらの髪を掴み、やはり同じように引き下げられた。なんの警戒もしておらず、自分でも驚くほどの早さで頭が傾く。一瞬で視界から実由紀が消えたが、手にはまだしっかり髪を掴んでいる。これだけは離してはいけない、初めての喧嘩だったが、それだけはわかった。

 突然始まった喧嘩に、双方のグループから歓声が上がった。聞き分けられないが、きっと妹も声をだしているだろう。絶対に負けられない、その思いが強くなった。

 美絵は懸命に膝蹴りを繰り出した。相手の太ももに何度も膝をぶつける。すぐに実由紀も真似してきた。互いにステップを踏むようにして、がむしゃらに膝を動かす。

 だがすぐに足が疲れてきた。2人の動きは鈍り、1回蹴っては腰をよじって相手の蹴りをいなす、そしてまた蹴る、そんな交互の攻撃が続いた。

 こちらもしんどいが、相手の息があがってきている、続けていれば勝機はあるか。そのまま、蹴り、防ぎ、作業のような攻防を繰り返したが、ふと、これは格好悪いのではないかという考えが頭をよぎった。妹はもっと格好良い姉を想像しているのではないか。これではいけない、なにか変化をつけたい、そう思った。

 格好良く投げ飛ばしてやろうと、頭で投げ方をイメージしたが髪を掴まれているため上手くいきそうにない。とりあえず引き倒そう、そう考えた。

 美絵は髪を引っ張るのをやめ、がっしりと実由紀を抱きしめると、右足を引っ掛けてぐいっと倒そうとした。実由紀もすぐに同じように腕を体に巻きつけてきた。

 美絵が左に倒そうとすると、実由紀がどたどたとバランスをとる。今度は実由紀が反対方向へ倒そうとしてきて、美絵がばたばたと動いて踏ん張る。2人は相手にしがみついて倒されまいとしながら、なんとか相手を倒そうともがいた。



 妹、亜美は同じグループの列の中で戦況を見守っていた。

 姉が相手の女と睨み合いをやめ、先手を打った時には、胸が高鳴った。きっと打ち負かしてくれるだろう、そう思った。

 だがいざ始まってみると、これはどうしたことだろう。1回1回、交互に蹴り合う様は幼稚園児のフォークダンスのようなマヌケさだった。

 まだ始まったばかりだと、自分に言い聞かせたが、それは随分長く続き、あろうことか、ぜえぜえと息切れの音が聞こえてきた。

 やっと終わったと思ったら、今度は2人して抱き合い、あっちへばたばた、こっちへばたばた、もつれ合って動く様子は酔っ払いの喧嘩にしか見えない。

 亜美は恥ずかしさのあまり顔が熱くなってきた。

 ふと横目で、リーダーの様子を伺うと、彼女は自分異常に顔を赤面させ、握りしめた拳をぷるぷると震わせている。

 こちらが視線に気づいたのか、リーダーと目があった。その目は、よくも騙したな、そう訴えているように見えた。

 彼女の悲惨さもわかる。目をつけていた男を横からかっさらわれ、それをなんとか奪おうとグループを巻き込み、事を大きくし、収拾がつかなくなり、最後にすがりついたのがこの姉だった。それがこれでは……。

 申し訳ないという気持ちと、自分も騙されていた被害者だという気持ちとがある。ふと相手のグループを見てみると、向こうのリーダーもまた、顔を赤面させているし、他の女も気まずそうにしている。

 ふとそのリーダーが、真っ赤な顔でこちらをきっと睨みつけてくるのが見えた。どうやら、こちらのリーダーを睨んでいるらしい。睨まれたほうも、真っ赤な顔をあちらに向ける。

 そして、なにが合図だったのか、2人のリーダーはほぼ同時に、意味不明な叫び声を上げながら列から飛び出し、相手に向かっていった。

 思ったより足を速めすぎたのか、制動をきかせきれなかった2人は、ごつんと頭をぶつけ、体もぶつけ合って、勢いそのままにもつれ合い、絡み合いながら倒れ込んだ。

「あんたが誠也を盗ろうとするから!」

「私が先に狙ってたのに!」

 誠也というのは件の男だ。2人は胸ぐらを掴み合い、その四肢を目まぐるしく動かし、上を争った。

 2人の体は姉達に比べるとずっと小さかったが、争う姿は比べ物にならないほどエネルギッシュだった。

 亜美は姉達の喧嘩を見ている恥ずかしさもあって、それを振り切るためにも飛び出した。そしてもつれ合っている2人に近づき、上に乗っている相手のリーダーの体に蹴りを飛び込ませた。

 それを潮に両グループがそこに殺到し、6対6の団子ができた。その横では相変わらず姉がばたばたと抱き合っていたが、亜美は意識してその2人を視線から外した。

 リーダーの腰に腕を巻きつけ投げようとしている女の髪を掴み、何度も頭に拳を叩きつけた。すぐ後ろから別の誰かに髪を引っ張られたが、それには構わず、がむしゃらに殴った。

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No title

素人同士の物慣れない喧嘩とか好きです(笑)

No title

私はあなたの小説が好きです

特に見ず知らず が好きです。

Re: No title

> 素人同士の物慣れない喧嘩とか好きです(笑)

遊び人さん、コメントありがとうございます。

Re: No title

> 私はあなたの小説が好きです
>
> 特に見ず知らず が好きです。

コメントありがとうございます。気に入ってもらえて嬉しいです。
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Author:デジタル
キャットファイトの小説を書いていこうかと思います。

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